東京高等裁判所 昭和36年(う)1675号 判決
判決理由〔抄録〕
本件のように同一の進路を進行している他の自動車の直後を進行する自動車運転者は先行の自動車が何時急停車してもこれに追突することのないよう常に先行車の動静に留意し、先行車との距離、自車の進行速度等を機に応じて調整し、事故を防止すべき業務上の注意義務あること論を俟たないまして本件の場合のように豪雨の際アスファルト舗装の完全にされている平坦な道路で急激な制動措置をとれば、乾燥時の場合と異なり制動距離も延び又スリップして運転操作が時に思うに任せず事故の発生を伴うことがあることは経験則に照らし明らかであるばかりでなく原審証人斎藤定男の証言によってもこれを認め得るのであるから、先行車が尾灯の停車灯を点じても停車したのではない場合に減速制動を施すには徐々に小きざみにしてスリップ状態を起させないような措置をとり、若しスリップ状態に入って把手操作の自由を奪われるような状態になれば直ちに制動操作を止めて正常運転に復せしめる等万全の措置を繰返しつつ道路中央線より反対方向からの進路内に立ち入らないようになすべき業務上の注意義務があることは当然であって原判決のこの点の判断は正当であり、もし被告人において右注意義務に違反する場合は、反対側より進行して来た自動車の運転者折田昇に過失あると否とに拘らず被告人に過失の責あること論をまたない。